『青空どろぼう』公開記念 東海テレビドキュメンタリー特集

『平成ジレンマ』の公開と併せて2月に開催された「東海テレビ ドキュメンタリー傑作選」では、終了直後からアンコールを望む声が多数よせられました。
そしてこの度、『青空どろぼう』の公開を記念し、規模をより拡大させた「東海テレビ ドキュメンタリー特集」を開催します。
数多くの傑作群の中から15作品セレクトし、4つのプログラム・テーマを設けてお贈りします。

「鳥獣戯画」などで国際的な評価を得たドキュメンタリー作家・松川八洲雄が、東海テレビで手がけた作品群から3本を厳選した〈松川八洲雄 テレビドキュメンタリーコレクション〉。
東海テレビのドキュメンタリーを特徴づける大きな要素の一つ、こだわりのナレーション。なかでも、女優・宮本信子による多彩なナレーションが魅力の4作品を集めた〈宮本信子 ナレーションデラックス〉。
テレビドキュメンタリーの大きな役割のは、一つの事件や事象を継続して追い続けること。なかには時代を、世代を超えてスタッフに受け継がれ、取材期間が40年にも及ぶものも。そんな持続力が生み出した作品を集めた〈東海テレビ ドキュメンタリーの世界〉。
そして、『平成ジレンマ』の齊藤潤一監督&阿武野勝彦プロデューサーが生みだした〈司法シリーズ〉の中から代表作3作品を上映。

※『検事のふろしき』『裁判長のお弁当』は司法シリーズとして制作されましたが、今回のプログラムでは、〈宮本信子 ナレーションデラックス〉として上映します。
※『あやまち』→『青空どろぼう』は四日市ぜんそくを、『村と戦争』→『いくさのかけら』は戦後を、『浮いてまう』→『約束』は徳山ダム建設を、『証言』→『毒とひまわり』は名張毒ぶどう酒事件をそれぞれ継続して取材した作品です。

※名古屋シネマテーク 7/16(土)〜29(金) 詳しくはこちら 
※大阪・シアターセブン(第七藝術劇場下) 7/9(土)〜22(金) 詳しくはこちら 
※広島・横川シネマ 7/10(日)〜29(金) 詳しくはこちら 
※ポレポレ東中野では、6月4日(土)〜7月8日(金)まで開催。終了しました。

 

松川八洲雄 テレビドキュメンタリーコレクション 3作品

オオシカの村

『オオシカの村』

1993年/60分 ナレーション:佐藤オリエ プロデューサー:国分道雄 監督:松川八洲雄 ディレクター:三股こずえ 撮影:中島洋
〈文化庁芸術作品賞〉

長野県大鹿村。室町時代の石像も残るこの村では、代々石ころだらけの山肌を耕し続け、神遊びで創造世界を楽しんできた。今は人口も激減し、そのほとんどがお年寄り。しかし、近年になり住み着いた若い世代もいる。機織りをして暮らすチェコ人、稲作に挑戦するイギリス人、村ではおヒゲさんと呼ばれる、いわゆるヒッピーの男性たち。深い谷底の村で慎ましく暮らしてきた村人の姿を映し出す。

『ガウディへの旅 ~世紀を超えた建築家~』

『ガウディへの旅 ~世紀を超えた建築家~』

1989年/64分 ナレーション:奥田瑛二 監督:松川八洲雄 プロデューサー:髙松良丸 ディレクター:阿武野勝彦 撮影:中島洋
〈日本民間放送連盟賞 教養部門 優秀賞〉

1926年、バルセロナの街中で、市電にはねられて死んだ一人の老人。サグラダファミリアを建設中のアントニ・ガウディだった。カタロニアの田舎町で育ったガウディが、バルセロナに実業家グエルと築こうとした理想郷。彼の死後、台頭してきたファシズムによって抑圧された自由。刻々と変わりゆく時代を背景に、ランボーの詩の朗読と成長し続けるサグラダファミリアが重なり合う。

『新シルクロード考 砂漠に降りた飛天たち』

『新シルクロード考 砂漠に降りた飛天たち』

1991年/64分 ナレーション:江守徹 ディレクター:石井仁 監督:松川八洲雄 撮影:中島洋、岩井彰彦

奈良の法隆寺に描かれた飛天。同じモチーフが、遥か西の地ウイグルにあるキジル千仏洞に描かれている。中国西域の暗黒部と呼ばれたこの砂漠の地は、しかしシルクロードのオアシス都市として発展し、ここで西洋と東洋の文化が入り混じった。古代の人々が空に観た仏教の宇宙観。キジル千仏洞の顛末を通じて、遥か西の地と日本の仏教思想を繋ぐシルクロードを捉えなおすドキュメンタリー。

宮本信子 ナレーションデラックス 4作品

『検事のふろしき』

『検事のふろしき』

2009年/53分 ナレーション:宮本信子 音楽:本多俊之 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一 撮影:塩屋久夫
〈ギャラクシー賞 奨励賞〉

撮影絶対禁止の検察庁。そこにカメラを長期に入れた。検事は、法廷に行く際、濃紺の風呂敷を持っている。大きな風呂敷の中には、被告の罪状の一部始終が入っている。裁判員裁判の導入前夜、日本で初めて検察庁の内部に長期密着取材を敢行し、『公益の代表』として仕事にあたる検事たちの知られざる姿を映像化した。

『裁判長のお弁当』

『裁判長のお弁当』

2007年/48分 ナレーション:宮本信子 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一 撮影:板谷達男
〈ギャラクシー賞 大賞、日本放送文化大賞 入選〉

弁当が二つ。ある裁判長の注目すべき日常。愛妻弁当を毎日昼と夜、執務室で二回食べる生活サイクル。日曜も祝日も夜十時まで仕事を続けている。名古屋地裁の天野裁判長は、毎年400件の新規事件と100件の裁判を同時進行しなくてはならないのだ。日本で初めて、現役の裁判長に長期密着し、裁判所の内部そして裁判官の肉声を世に出したドキュメンタリーである。

『とうちゃんはエジソン』

『とうちゃんはエジソン』

2003年/47分 ナレーション:宮本信子 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:伏原健之 撮影:中根芳樹
〈ギャラクシー賞 大賞、FNSドキュメンタリー大賞 大賞〉

愛知県額田町の山奥の工房。ここで福祉用具の発明をしている加藤源重さんは、そのユニークな発想と飽くなき研究心から、"三河のエジソン"と呼ばれている。利益はとらず、材料費と光熱費だけで、高齢者や障害者のためのオーダーメイド生活用具を作り続ける。夫を支え、見守り続ける信子夫人。女優・宮本信子が、信子夫人の一人称で優しく語り、加藤さんの発明人生を見守るドキュメンタリー。

『いくさのかけら ~戦後六十年 四つの物語~』

『いくさのかけら ~戦後六十年 四つの物語~』

2005年/48分 ナレーション:宮本信子 プロデューサー・ディレクター:阿武野勝彦 撮影:塩屋久夫、岩井彰彦

終戦から60年、戦争の名残と共に生きる人々がいる。戦場で綴られた兄の日記。借金で家族を苦しめた父の隠された戦争時代の記憶。防空壕で聞いた、音楽好きの青年将校の叶わぬ夢。爆撃された東洋一の兵器工場・豊川海軍工廠の、最後の慰霊祭。それぞれが、いまを生きる人々が握りしめている戦争の欠片。4つの物語を通して、戦後60年間続いてきた人々の想いを描き出す。

東海テレビ ドキュメンタリーの世界 5作品

『あやまち』

『あやまち』

1970年/49分 ナレーション:岸田今日子 企画:田中信之 ディレクター:大西文一郎 撮影:中島洋
〈日本民間放送連盟賞銀賞〉

行政が誘致したコンビナートが吐き出す煙の下の町・三重県四日市市磯津。ぜんそくに蝕まれ苦しむわが子を自分の手で救えないと知った時、母親たちが集まり、訴え、行進する。しかしデモの流れは広がらず消えた。工場で豊かになった磯津は、きれいな空と海も失った。詩人・石垣りんが紡ぐ言葉にのせ、磯津の路地裏から四日市公害を見た映像詩。

『浮いてまう ~岐阜県徳山村への愛惜~』

『浮いてまう ~岐阜県徳山村への愛惜~』

1977年/48分 ナレーション:渡辺美佐子 プロデューサー・ディレクター:山内公明 撮影:中島洋
〈文化庁芸術祭参加〉

昭和52年、岐阜県徳山村。この村は、間もなくダムに沈む。村の水没は、村人たちにとっては「浮いてしまう」こと。戦時中、兵士として男たちが出ていき、戦後、働き手として若者が町へ出ていき、いま経済成長という新たな戦争で、村人は村から引きはがされ浮いてゆく。村人たちが村で過ごす最後の一年間を、60戸余りが暮らす集落・戸入の人々の日常と季節の移り変わりを通して描き出す。

『証言 ~調査報道・名張毒ブドウ酒事件~』

『証言 ~調査報道・名張毒ブドウ酒事件~』

1987年/60分 ナレーション:佐藤慶 プロデューサー:江野雄二 ディレクター:山内公明、門脇康郎

昭和36年、三重県名張市葛尾という小さな山村で、村の集会中、ブドウ酒に農薬が混入され、女性5人が死亡する事件が起きた。犯人とされた奥西勝の犯行を断定するには物証が乏しく、村人たちの証言が決め手となった。しかし、事件からおよそ1ヵ月、彼らは事件直後の証言を一斉に変更し、新しい証言をもって奥西の死刑が確定する。独自の取材と検証で、名張毒ブドウ酒事件の証言を巡る真相に迫る。

『約束 ~日本一のダムが奪うもの~』

『約束 ~日本一のダムが奪うもの~』

2007年/48分 ナレーション:小西美帆 プロデューサー・ディレクター:阿武野勝彦 取材:鈴木祐司 撮影:塩屋久夫
〈地方の時代映像祭グランプリ、日本民間放送連盟賞 報道部門 優秀賞〉

人生最大の悲劇は、金に換えられないものを力づくで奪われたり、騙し取られたりすることではないか。岐阜と福井の県境。「徳山ダム」のため徳山村は水没し廃村となった。行政は水没する道の代わりに新しい道路網の建設を約束したが、平成の市町村合併のドサクサにまぎれて反故にした。故郷を奪われ、道まで奪われた村民の怒り。取材開始は32年前。

『村と戦争』

『村と戦争』

1995年/71分 ナレーション:杉浦直樹 プロデューサー・ディレクター:阿武野勝彦 撮影:岩井彰彦
〈日本民間放送連盟賞 優秀賞、ギャラクシー賞 優秀賞、放送文化基金賞優秀賞〉

人口3,000人。小さな村の戦争とその傷痕。岐阜県東白川村。戦後50年という年に、村の古老たちが、各戸を回り、平和祈念館に収めるために戦争関連の遺品を収集していた。ハワイ真珠湾へ参加した雷撃隊員、満州開拓団、学徒出陣の兄と植物図鑑の好きな弟。半世紀たった山里で戦時品が語りだす。

司法シリーズ 3作品

『光と影 ~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』

『光と影 ~光市母子殺害事件 弁護団の300日~』

2008年/47分 ナレーション:寺島しのぶ プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一 撮影:岩井彰彦
〈日本民間放送連盟賞 最優秀賞、芸術祭優秀賞、ギャラクシー賞優秀賞〉

殺人鬼を守る鬼畜弁護団というバッシング。この事件で弁護士たちは激しく非難された。1999年山口県光市で発生した母子殺害事件。当時18歳1ヶ月の少年が逮捕された。世間は、犯人を死刑にせよと熱狂していた。報道も、被告の発言を「荒唐無稽」と切り捨て、弁護など不要という世論に加担していた。鬼畜と呼ばれた弁護団の内部にカメラを入れ、社会の深層を照射した。

『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父』

『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄 息子を殺された父』

2009年/47分 ナレーション:藤原竜也 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一 撮影:板谷達男
〈FNSドキュメンタリー大賞 大賞 日本放送文化大賞 入選〉

犯罪被害者は、みな死刑を求めているのか…。2007年、名古屋・闇サイト事件で娘を殺害された母、磯谷富美子さん。1983年、半田保険殺人事件で弟を殺された兄、原田正治さん。1994年、長良川木曽川連続リンチ殺人事件で一人息子を失った父、江崎恭平さん。死刑の現実と遺族の多様な思いを、肉親を殺害された3人の取材で明らかにする。

『毒とひまわり ~名張毒ぶどう酒事件の半世紀~』

『毒とひまわり ~名張毒ぶどう酒事件の半世紀~』

2010年/52分 ナレーション:仲代達矢 プロデューサー:阿武野勝彦 ディレクター:齊藤潤一 撮影:坂井洋紀
〈ギャラクシー賞 奨励賞〉

司法は、獄中死を望んでいる…。1961年、三重県名張市で起きた女性5人の毒殺事件。犯人とされた奥西勝死刑囚は、一貫して獄中から無罪を訴え続けている。2010年4月、最高裁は名古屋高裁へ審理を差し戻した。鈴木泉弁護団長は「一日も早い釈放を勝ち取る」と言う。しかし、奥西は84歳…。帝銀事件の周辺も辿り、一度下した判決に固執する司法の姿を浮き彫りにする。